煎茶のこころ

「煎茶のこころ」を整理してまとめるとつぎのように要約されます。

●自由の精神
自由という言葉は、気まま、放縦といったことと混同されるきらいがありますが、自由とはそのような意味ではないのです。
自由の境地にたどり着くには、数多くの不自由に耐える必要があります。手前はそれにたどり着く、一つの過程であるといえるでしょう。それを越えたところにそれぞれの個性を生かす自由の精神が開花するのです。

●互譲のこころ
一つの急須から、五つの茶碗に注がれるお茶は、味・量ともすべて平等に分けられます。これは、お茶が一人だけで楽しむものでは無いことを表わしています。お茶を入れる人と、そのお茶をいただく人の心が通いあって、お茶は一層おいしくなります。
行き届いた心づかいと心くばり───互譲の精神は、煎茶の大切なこころの一つです。

●個性の発露
お茶の味は、湯かげん、茶葉と湯の量、急須に入れておく時間、茶碗へのつぎ方、これらの組み合わせによって決まります。しかし、同じ材料を使ってもその味はいろいろに変わるほど微妙なものです。
おいしいお茶を出すには、出す人の心づかいが大切です。細やかな心づかいと工夫が、その人の味となってお茶の味を出します。

●豊かな人間形成
煎茶に付随する、茶道具や書画の鑑賞は、美術に対する関心を深め、ひいては日本文化への目を開いてくれます。私たちの祖先が、つくり上げ育んだ日本文化の伝統にひたり、日本の美と心にふれることは、私たちの魂をゆり動かさずにはおきません。

このような四つの特色が互いに結びつき「煎茶のこころ」が生きてくるのです。